2026.07.28
梅雨も明け、本格的な夏が到来する季節となりました。
気象庁の季節予報によると、2026年の夏(7月~8月)の気温は例年に比べて全国的に高い予想となっており、厳しい暑さ(酷暑)となるおそれがあります。
この時期、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療を受けている患者さんは「寝苦しくてCPAPマスクを外してしまう」「夜間の暑さが我慢できない」といった思いを抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。実際のところ、暑くて眠れず途中でマスクを外してしまったり、クーラーの効いたリビングでそのまま寝落ちしてしまったりするなど、夏場はCPAPの使用率が下がりやすい傾向にあります。今回はCPAPの使用率が下がることによる治療中断の危険性と、使用率を下げないための実践的な夏対策についてお話します。
治療中断の危険性
CPAPの使用時間が1時間未満の状態が続く場合、医学的には治療を継続する効果が得られにくいため、治療の一時中止や他の治療法への変更を検討する必要が生じることもあります。なぜこれほど重要なのでしょうか。それは、CPAP治療の効果は「毎晩使い続けること」で初めて発揮されるからです。CPAPを中断すると、以下のような悪影響が起こりやすくなります。
- 日中の強い眠気と集中力の低下
睡眠中に何度も呼吸が止まると、深い眠りが得られず、脳や体が十分に休まりません。朝起きても疲れが取れない、昼間にウトウトしてしまうなど、仕事や日常生活に大きな支障をきたします。
- 治療効果の著しい低下
使用頻度が落ちると、無呼吸や低呼吸の回数が再び増える、血中の酸素濃度が低下する、夜間の血圧が不安定になるといった問題が生じ、これまで得られていた治療効果がリセットされてしまう可能性があります。
- 深刻な健康リスクの増加
無呼吸が再発すると、高血圧、心筋梗塞、脳卒中のリスクが高まるだけでなく、糖尿病
や認知機能の低下、免疫力の低下といった全身への悪影響が生じます。
特に高齢者や基礎疾患のある方は注意が必要です。
実践しやすい夏の対策
適切な対策を講じることで、夏場でも快適にCPAP治療を継続することは十分に可能です。これからお伝えする夏場を乗り切るための3つの対策を実践し、毎晩使い続けながら快適な睡眠を取りましょう。
①寝室環境の改善
まず大切なのは寝室環境の管理です。室温は26℃前後、湿度は50~60%が理想とされています。エアコンで無理に気温を下げるのではなく、上手に活用することがコツです。寝る30分前から部屋を冷やしておくことで寝つきが良くなります。またタイマー設定で夜間停止してしまうと、CPAP使用中に寝苦しくなってマスクを外してしまう原因となるため、朝までの使用をお勧めします。
気温がそれほど高くなくても湿度が高いと、体がベタベタして寝苦しくなります。エアコンを除湿機能に切り替えるなどして、適切な湿度管理を心がけましょう。
②寝具の工夫と体温調整
冷感パッドや通気性の良い麻素材の寝具、そして通気性のよい枕を使用することで、効果的な暑さ対策ができます。なかでも通気性のよい枕は、頭部の熱を効率的に放散させるため、夜間の快適性が大きく向上します。
また首付近を冷やすという方法も非常に効果的です。首には大きな血管があり、特に頸動脈あたりを冷やすことで、冷えた血液を効率的に全身へ送ることができます。ネッククーラーやアイスノン、氷枕などの活用も検討してみてください。
③CPAP付属の加湿器の使用、マスクのメンテナンス
冬場と同じ設定だとマスク内が蒸れすぎることがあります。加温・加湿のレベルを少し下げてみましょう。不明点があればご相談ください。
マスクやベルトに汗や皮脂などの汚れが付着すると皮膚炎になりやすくなります。定期的な洗浄清拭を心がけることで、肌トラブルを防ぎ、より快適にCPAP治療を続けることができます。
最後に
夏の暑さは確かに大敵です。しかし、今回お伝えした3つの対策を組み合わせることで、ほとんどの患者さんが夏場でもCPAP治療を継続できるようになります。
CPAP利用率が1時間未満になっている方は、治療の中止につながる可能性がありますので暑さに負けず、一緒に頑張りましょう。
当院では、皆様の睡眠の質の向上と健康維持に向けて、全力でサポートさせていただきます。夏場のCPAP治療についてお悩みやご不安があれば、足立区北千住のえんどう耳鼻咽喉科クリニックまでお気軽にご相談ください。
【監修】
えんどう耳鼻咽喉科クリニック 院長
遠藤 誠
東京慈恵会医科大学医学部卒業後、同大学病院および関連病院にて13年以上にわたり耳鼻咽喉科疾患の診療に従事。国保旭中央病院では耳鼻咽喉科部長を務め、慈恵医大本院では睡眠外来を担当。2012年に北千住にてえんどう耳鼻咽喉科クリニックを開院。現在も慈恵医大の睡眠外来診療に携わる。
■ 専門医・資格
・日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会認定 耳鼻咽喉科専門医
・日本睡眠学会認定 総合専門医
・補聴器適合判定医(補聴器相談医)
■ 所属学会
・日本耳鼻咽喉科学会
・日本睡眠学会
・日本小児耳鼻咽喉科学会
・日本口腔咽頭学会