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トピックス

アレルギー性鼻炎(1)点鼻薬の正しい知識

2022.11.11

皆さん、こんにちは!ドクターまこです。

最近は、急に涼しくなったせいか、風邪の患者さんが非常に多いのですが

やはり、秋の鼻炎の代表であるダニアレルギーなどで悪化し、くしゃみ・鼻水・鼻づまりの相談を受けることもしばしばあり同じようなご質問や、誤解をよく耳にします。

そこで、今日はアレルギー性鼻炎についてブログしたいと思います。

何回かのシリーズにしますが、今回は「点鼻薬の正しい知識」を皆さんに是非お伝えしたいと思います。

ちなみに「点鼻薬」とは、鼻にシュッシュッとする薬、もしくは、ポタポタたらす薬のことですね。

1)点鼻薬の種類

まず、知っておいてほしいのは、「点鼻薬という呼び名で、全部をひとまとめにしない!」ということです。

つまり、いくつかの種類があり、その使い方が異なり、それぞれの長所と短所を理解して使う必要があります。

どれも一緒だと思って、適当に使っていると、かえって病気になることもあります。点鼻薬は大きく次の4つに分けられます。

①ケミカルメディエーター遊離抑制剤(ゆうりよくせいざい)

②抗ヒスタミン薬点鼻

③ステロイド点鼻

④血管収縮剤点鼻

もう、この文字を見た瞬間に読むのをやめたくなった貴方( ゚Д゚)!!大丈夫です。

おそらく鼻炎で悩んでいる方なら、具体的な名前を聞けば、「あ~、それね!」と安心すると思います。 

それぞれの代表的な点鼻薬の商品名(市販のものも記載しています)は以下の通りです。

①ケミカルメディエーター遊離抑制点鼻

・・・インタール点鼻

②抗ヒスタミン薬点鼻薬

・・・リボスチン点鼻薬  ザジテン点鼻

③ステロイド点鼻薬

・・・フルナーゼ点鼻薬  ナゾネックス点鼻薬  アラミスト点鼻薬  エリザス点鼻薬 リンデロン点鼻薬

④血管収縮剤点鼻薬

・・・トーク点鼻薬 コールタイジン点鼻薬  ナザール点鼻  パブロン点鼻

どうですか?1つくらいは聞いたことがありますよね?

2)それぞれの特徴

①インタール点鼻

①の点鼻の最大のポイントは「古くからあるため、過去の使用経験が長く、安全性が確かめられている」ことです。

そのため、アレルギー性鼻炎の予防(花粉症ならシーズンに入る前)や授乳中・妊婦さんにも用いることも可能です。

しかし、効果発現はマイルドで、2週間程度要することから、全国的に処方頻度が少なくなっているのが現状です。

*個人的にはとてもいい薬だと思っています。

②リボスチン点鼻・ザジテン点鼻

②は、ステロイドを含まないという点では優れていますが、最近では抗ヒスタミン薬の内服がどんどん進歩しているため

抗ヒスタミン薬の点鼻はほとんど使われなくなりました。

しかも、抗ヒスタミン点鼻は点鼻でありながら、飲み薬のように、多少眠くなるため、若干注意が必要ですね。

③ステロイド点鼻

③は、現在の点鼻薬の主流をなすものです。

でも「ステロイド」という文字を見ると、患者さんの中には、「強力」、そして、「副作用が怖そう・・・」と拒否反応を示す方がいるかもしれませんね。

実は最近のステロイド点鼻薬は非常に副作用が少ないのが最大の特徴なんです。

なかでも「アラミスト」や「ナゾネックス」は噴霧した鼻という場所で作用し、ステロイド成分が血液循環に乗りにくく、全身に廻らない,つまり、全身性の副作用が少ないという長所があります。

また、アラミストやナゾネックスが液体状であるのに対して、嫌いだという人には、極めて刺激の少ないパウダー状のエリザス点鼻というのがあり

これも副作用が少ない点鼻として評価されています。

ただし、安全だからといって、副作用がないわけではないので、漫然と使用しないことも大切です。

また、④の血管収縮点鼻のように、速効性があるわけではなく、ちょこっと使って終わりにする使用法では効果はあまり期待できません!!

④血管収縮点鼻

④は、これまで述べた①~③とは全く異なるもので、副作用に十分な注意を払うべき点鼻薬なんです。

まさに、今回ブログを書いた最大の理由は、この「血管収縮点鼻薬」を取り上げたかったからなんです!

3)点鼻薬性鼻炎とは

そもそも血管収縮剤を点鼻にするというのは、どういうことでしょうか?

実は、鼻の中(鼻粘膜)というのは「血管の塊」といってもいいくらい血管が豊富なところなんです。

その血管をギューッとちぢまさせる(まるで、びしょびしょに濡れたタオルをギューッと絞るようにする)こと=収縮させることで、鼻の中の空気の通り道が広げてあげ、鼻づまりを改善するんです。

しかも即効性があり、15分程度で効き目を実感でき、鼻閉にひどく悩んでいる人には、とても都合の良い薬です。

当院では、この薬を、条件付きで患者さんに処方するようにしています。

たとえば、処方する例としては、未治療で重症なアレルギー性鼻炎の人。鼻づまりがひどいタイプの風邪。睡眠時無呼吸症候群で夜間CPAPが使えないほど、鼻閉が強い。

手術するほどひどい鼻閉があるけど、様々な理由で手術が不向きな人。などなど、条件付きの限定的な処方にしています。

さあ、なぜこんなに限定的にするのかといいますと・・・それは・・・・

血管収縮点鼻の問題点は「だんだん、効かなくなる」ということなんです。

つまり、使えば使うほど、効いている時間が短くなり、回数を多くしないと効かなくなるんです。

もともとは約4~5時間程度とされますが、徐々に短くなり、頻繁に点鼻しないと快感が得られなくなるという欠点があるのです。

理由には諸説ありますが、「受容体のダウンレギュレーション」が推測されています。

血管収縮点鼻を、鼻粘膜に噴霧すると、鼻の粘膜表面にある受け皿(これを受容体といいます)が、最初は沢山あり、お皿に血管収縮点鼻薬が乗れば、効き目を現わします。

しかし、何度もふりかけていると、このお皿の数が減少していくので、なかなか、血管収縮点鼻薬がお皿に乗らなくなる=命中しなくなる

すなわち、沢山点鼻しないと効き目が出ないということになってしまうのです。

これが、点鼻薬性鼻炎と呼ばれる病気の本態です。

血管収縮点鼻は、市販でも平気で販売されていますし、比較的安いため、すぐに手の届くものになっています。

また添付文書も1日6回~10回まで大丈夫と書かれているので、安心して点鼻をしがちです。

実際には、長期連用が問題になるのですが、そのことにはほとんど触れられていません。

ぜひ、皆さんも薬局で購入しようかなと思ったときは、成分を見て、「塩酸ナファゾリン」とか「塩酸トラマゾリン」といった表示があったら「長期連用を避ける」よう注意してきましょうね。

さあ、いかがでしたか?!次回はアレルギー性鼻炎(2)治療の必要性はどこにあるか?をテーマにしたいと思います。

ぜひご期待くださいね~。